令和6年能登半島地震より被害を受けられた皆さまに、心からお見舞いを申し上げます。
雇用調整助成金とは?
経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業、教育訓練又は出向により、労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当等の一部を助成する制度です(厚生労働省資料)。
この雇用調整助成金ですが、新型コロナ感染症への緊急対策として、対象事業主の拡大、生産指標、雇用指標、被保険者期間等の要件緩和、助成率及び助成上限額の引き上げ、雇用保険被保険者であるという要件の撤廃等に加え、申請手続きの大幅な簡略化(計画の事前届出や添付書類等)、申請期限の延長等の措置が講じら、脚光を浴びたところ。
一方、既存の雇用調整助成金と違い、容易に受給出来るという側面から不正受給が横行するなど、普段、雇用調整助成金という言葉を知らない方々も新聞やニュース等で目にする機会が多くなり、その認知度(適切な表現ではないかもしれませんが)が高まりました。
上記のようなことから、成り立ちをご存じない方々は、雇用調整助成金制度が新型コロナ感染症対策のために創設されたように思われるかもしれませんが、元々は、オイルショック時の1974年(昭和49年)に成立した雇用保険法において「雇用保険給付金」が創設され、現在の雇用調整助成金の原型が誕生しました。
その後、1981年(昭和56年)に雇用調整関係の給付金の整理統合され、現在の「雇用調整助成金」に至っています。
この背景にあったのは、紆余曲折がありましたが、日本独自の雇用契約の形態(終身雇用、職務無限定型、解雇がしづらいなど)です。
雇用調整助成金の本旨は、景気変動の影響を受け事業活動の縮小を余儀なくされている中で、休業、教育訓練、出向を行い、雇用維持(=雇用の安定)を図ることを旨とする日本独自のシステムと言えると思います。
その後、政府の政策目標が「失業なき労働移動促進」に転換され、従来の「雇用の安定」から「労働移動促進」へと変わる場面もありましたが、2008年(平成20年)のリーマンショックにより再び脚光を浴びることになりました。
ところが、第二次安倍内閣時のアベノミクス第3の矢である「日本再興戦略」(2013年6月14日閣議決定)のアクションプランにおいて「リーマンショック以降の急激な雇用情勢の悪化に対応するために拡大した雇用維持型の政策を改め、個人が円滑に転職等を行い、能力を発揮し、経済成長の担い手として活躍できるよう、能力開発支援を含めた労働移動支援型の政策に大胆に転換する。」(「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」(平成 25 年6月14 日)P29)とされました。
このため、「雇用調整助成金(2012 年度実績額約 1,134 億円)から労働移動支援助成金(2012 年度実績額 2.4 億円)に大胆に資金をシフトさせることにより、2015 年度までに予算規模を逆転させる。」(同)が政策転換の目標として掲げられました。
このように、雇用調整助成金の重要性のウエイトを政策的(意図的)に落とす方向に一旦は舵が切られたのですが、その後の訪れたのが、いわゆる”コロナショック”でした。
令和6年能登半島地震に係る雇用調整助成金の特例措置
厚生労働省は、令和6年能登半島地震に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得ない事業主に対して、下記のとおり雇用調整助成金の特例措置(概要)を講じています。
1 要件緩和
(1)生産指標の確認期間を3か月から1か月に短縮
(2)最近3か月の雇用量が対前年比で増加していても助成対象とすること
(3)地震発生時に事業所設置後1年未満の事業主についても助成対象とすること
(4)計画届の事後提出を可とすること
(5)残業相殺の撤廃
2 助成率の引き上げ及び支給日数の延長等
(1)休業又は出向を実施した場合の助成率の引き上げ(新潟、富山、石川、福井の各県内の事業所が対
象)
【大企業】1/2⇒2/3 【中小企業】2/3⇒4/5
(2)支給日数を「1年間で100日」から「1年間で300日」に延長
(新潟、富山、石川、福井の各県内の事業所が対象)
(3)雇用保険被保険者期間(継続)が6ケ月未満の労働者も対象(新規学卒者など)
(4)クーリング要件の撤廃
(5)休業等規模要件の緩和
3 特例措置の対象期間
休業等又は出向の初日が令和6年1月1日から令和6年6月30日までの間にある場合
その他の詳細な支給要件及び言葉の意味等については、厚生労働省のホームページに記載があります。以下のとおりです。
〇令和6年能登半島地震の災害に伴う雇用調整助成金の特例措置の案内
〇特例措置の概要
〇特例措置リーフレット
〇雇用調整助成金FAQ(令和6年能登半島地震特例用)
厚生労働省は、令和6年能登半島地震に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得ない事業主に対して、下記のとおり雇用調整助成金の特例措置(概要)を講じています。
1 要件緩和
(1)生産指標の確認期間を3か月から1か月に
短縮
(2)最近3か月の雇用量が対前年比で増加して
いても助成対象とすること
(3)地震発生時に事業所設置後1年未満の事業
主についても助成対象とすること
(4)計画届の事後提出を可とすること
(5)残業相殺の撤廃
2 助成率の引き上げ及び支給日数の延長等
(1)休業又は出向を実施した場合の助成率の引
き上げ(新潟、富山、石川、福井の各県内の事業所が対象)
【大企業】1/2⇒2/3
【中小企業】2/3⇒4/5
(2)支給日数「1年間で100日」から「1年
間で300日」に延長(新潟、富山、石川、
福井の各県内の事業所が対象)
(3)雇用保険被保険者期間(継続)が6ケ月未
満の労働者も対象(新規学卒者など)
(4)クーリング要件の撤廃
(5)休業等規模要件の緩和
3 特例措置の対象期間
休業等又は出向の初日が令和6年1月1日か
ら令和6年6月30日までの間にある場合
その他の詳細な支給要件及び言葉の意味等については、厚生労働省のホームページに記載があります。以下のとおりです。
〇令和6年能登半島地震の災害に伴う雇用調
整助成金の特例措置の案内
〇特例措置の概要
〇特例措置リーフレット
〇雇用調整助成金FAQ(令和6年能登半島地
震特例用)
雇用調整助成金ポータルの受付開始・不正受給について
令和5年12月18日(月)より、「雇用調整助成金ポータル」(電子申請)の受付が開始されています。
「雇用調整助成金・産業雇用安定助成金オンライン受付システム」による新規の申請は、令和6年1月末をもって終了されています。
なお、電子申請には「GビズID」の申請・取得が必要とされています。
前段でもちょっと触れましたが、助成金の不正受給が増えています。
このため、厚生労働省では、不正受給の対応を厳格化しています。不正受給は「刑法第246条の詐欺罪」等に問われる可能性があるほか、不正受給額等の返還、不正受給日から5年間、雇用関係助成金(不正受給を行った以外の助成金を含む)の受給ができなくなる可能性があるなど厳しいペナルティーが待っています。
雇用調整助成金の目的及び制度沿革は、前段の「雇用調整助成金とは?」のとおりです。打ち出の小槌という性質のものではありません。
⇒「雇用調整助成金(不正受給関係)」(厚生労働省ホームページ)
被災された方々の日常生活、被災地の復旧・再興等、1日も早く震災前の姿に戻ることを心から祈ります。能登、がんばれ!
